コロナ以降、東京や横浜から神奈川県西湘エリアへの移住相談が、中川工務店にも目に見えて増えてきました。在宅勤務の浸透、子育て環境への問い直し、住居コストの再考。「いつかは」だった話が、ここ数年で一気に現実の選択肢になっています。この記事では、地元・小田原で1970年から家づくりを続けてきた工務店の視点から、東京・横浜から西湘へ移住する際の実際を、なるべく具体的に整理しました。
なぜいま、西湘移住なのか
西湘エリア(小田原市・南足柄市・足柄上郡開成町・湯河原町など、神奈川県西部の地域)が移住先として選ばれる理由は、ひとことで言えば「距離と自然のバランス」です。
箱根の手前、相模湾と丹沢の麓に広がるこの地域は、東京駅まで新幹線で35分前後、東海道線でも70〜80分。週に何日か出社が必要なリモートワーカーにとって「通えなくはない距離」を保ちながら、海・山・温泉・里山が生活圏に同居しています。物価や住居コストは都心の半分近く、土地の選択肢も豊富。にもかかわらず、医療・教育・買い物といった生活インフラは「地方の不便さ」を感じない水準です。
その結果、ここ数年の傾向として目立つのが「都心とは縁を切らないままの移住」です。会社員のまま、子育てを終えた夫婦のまま、東京・横浜とは行ったり来たりしつつ、生活の拠点だけを西湘に置く。完全に田舎暮らしへ切り替えるのではなく、両方を持ち続ける、というスタイルが現実的な選択肢になっています。
通勤の現実:所要時間と費用
「東京や横浜まで本当に通えるのか」は、ほぼ全員が気になるところです。実際の所要時間と費用を整理してみます。
| 区間 | 所要時間(目安) | 定期代の目安/月 |
|---|---|---|
| 小田原 → 東京(新幹線こだま) | 約35分 | 約40,000円〜45,000円 |
| 小田原 → 東京(東海道線) | 約75〜85分 | 約30,000円台 |
| 小田原 → 横浜(東海道線) | 約50〜60分 | 約20,000円台 |
| 開成 → 新宿(小田急ロマンスカー) | 約75分 | 約30,000円台+特急料金 |
| 湯河原 → 東京(東海道線・新幹線併用) | 約70〜90分 | 区間と乗換に依存 |
ポイントは、週5日出社にこだわらないかぎり、十分通える距離だということ。週2〜3日の出社頻度なら、新幹線通勤も現実的なコスト感に収まります。会社の交通費規定(新幹線通勤が認められるか、距離制限があるか)を事前に確認しておくと、家のエリア選びの選択肢が広がります。
新幹線通勤を視野に入れる場合は、会社の交通費上限(多くは月5〜7万円が目安)と、定期券支給範囲のルールを早めに人事に確認しましょう。「住宅地から駅までの所要時間」もセットで考えるのが現実的です。
エリア比較:小田原・南足柄・開成・湯河原
西湘エリアと一口に言っても、地域ごとに性格はかなり違います。「移住したいエリア」を絞り込む際の判断材料として、主要4市町を比べてみます。
小田原市
西湘の中心都市。新幹線駅・東海道線・小田急線・伊豆箱根鉄道大雄山線が交わるターミナルで、通勤の選択肢が一番広いエリアです。ダイナシティを始めとする商業施設、市立病院や済生会など医療機関、保育園から大学まで揃った教育環境。歴史ある城下町ならではの落ち着いた市街地と、栢山・鴨宮・国府津など郊外住宅地のバランスもよく、「都市の機能」と「西湘の自然」を両取りしたい人に向きます。詳細は 小田原の注文住宅ページ をどうぞ。
南足柄市
丹沢のふもとに広がる、自然と工場と田園が同居する街。富士フイルム・アサヒビールの拠点があり、もともと社員家族の住まいとして整備されてきました。子育て世帯にとっての安心感はピカ一で、待機児童ゼロ・小中学校の規模が適正・自然と触れ合える環境が日常です。土地価格が落ち着いており、平屋や広い庭付き住宅が現実的な予算で建てられるのも魅力。 南足柄の注文住宅ページ。
足柄上郡 開成町
面積わずか6.55km²の小さな町ですが、「住みやすさ」で全国的に知られ、人口が増え続けている稀有なエリア。新宿までロマンスカーで約75分、東名「大井松田IC」までも近く、都心アクセスと田園風景の両立を狙いたい移住者にぴったり。中川工務店のR+house事業部・打ち合わせ拠点もここに置いています。 開成町の注文住宅ページ。
湯河原町
温泉と相模湾。文化人が愛した町。子育て後の夫婦の「終の住処」、あるいは東京とのデュアルライフ(二地域居住)の拠点として、近年急速に注目を集めています。傾斜地が多く土地選びには注意が要りますが、日常に温泉と海がある暮らしを求める方には唯一無二。 湯河原の注文住宅ページ。
生活インフラ:買い物・医療・教育
「移住すると生活が不便になるのでは」と不安になる方も多いのですが、西湘エリアは想像よりずっと整っています。
買い物:日常の食料品は地元スーパー(ヤオマサ・小田原百貨店・ロピアなど)と全国チェーン(オーケー・カインズ・ヤマダ電機など)でまかなえます。小田原ダイナシティ、ラスカ小田原、コストコ・湘南厚木店も車圏内。ネット通販はもちろん通常通り使えます。
医療:小田原市立病院・済生会湘南平塚病院・東海大学医学部付属病院など、急性期から専門医療まで対応できる病院が圏内に。地域のクリニック・小児科・産婦人科も十分にあります。子育てや老後に大きな不安はありません。
教育:公立小中学校はどの市町も少人数で目が届きやすい環境です。高校は小田原・湘南・神奈川県立の進学校が圏内、大学進学も新幹線通学が可能。塾・習い事も整っています。
子育て環境の本当のところ
子育て世代の移住で「西湘エリアに惹かれた」という声で多いのは、次の3点です。
- 外で遊べる時間が圧倒的に増える:徒歩圏に公園・川・里山があり、土日の過ごし方が自然と「外」になります。
- 保育園・幼稚園に入れる:開成町・南足柄市は待機児童ゼロを継続。小田原市も都市部より入りやすい状況です。
- 地域コミュニティが残っている:移住者向けのつながりも温かく、初対面でも近所付き合いが自然に始まることが多いです。
一方で、検討時に押さえておきたいのは「習い事や塾への送迎が車前提」ということ。都心のように歩いて教室をはしごする、という生活は難しくなります。共働きのスケジュール設計は、車での移動を前提に組み直す必要があります。
移住者の家づくりで気をつけたいこと
地元工務店の視点で、東京・横浜から移住して家を建てる際に「ここを押さえておけば失敗しにくい」というポイントを4つに絞りました。
1. 土地から考える
移住の場合、ほぼ全員が土地探しから始まります。気をつけたいのは、「広告に出ている土地」だけで判断しないこと。地形の高低差、日当たり、潮風、地盤の固さ、接道の幅、近隣の建ぺい率まで、現地に通って初めて見えてくる条件があります。建築家・工務店と一緒に土地を見ると、建てた後の暮らしまで含めた判断ができます。
2. 通勤動線を実体感で確かめる
「駅まで車で15分」を、実際に平日のラッシュ時間帯にやってみると、想像と違うことが少なくありません。出社頻度が決まっているなら、その曜日・時間帯に何度か通って、満員度・駐車場の状況・乗換の負担を確認するのがおすすめです。
3. 西湘の気候に合った性能設計
西湘は、夏は湿度が高く、冬は内陸(南足柄など)で冷え込み、海沿いは潮風と直射日光が強いエリアです。中川工務店ではVOICE実例でUA値0.39〜0.48・C値0.1〜0.4を実現しており、ZEHや耐震等級3にも対応しています。エリア特性に合わせた断熱仕様・外装材選びが、長く快適に暮らす鍵です。
4. 打ち合わせはオンライン+現地のハイブリッド
移住前の打ち合わせは、東京・横浜にいながらオンラインで進められます。中川工務店では、初回相談からプラン提示までをオンラインで行い、土地確認や模型の確認だけ現地(開成町店舗)に来ていただく、というやり方が定番になっています。打ち合わせのために何度も移動する必要はありません。
移住の進め方・5ステップ
実際に移住を進める場合の、無理のないステップを整理します。検討開始から入居まで、目安として12〜18ヶ月です。
- 1. 情報収集(1〜3ヶ月):エリア比較・通勤検証・ライフプラン・予算の整理。オンラインの家づくり勉強会も活用。
- 2. 個別相談・土地探し開始(2〜4ヶ月):工務店との初回相談で、希望条件と総予算を共有。土地情報を一緒に絞り込みます。
- 3. 土地決定・プランニング(3〜5ヶ月):建築家とプランを練り上げ、模型・図面で生活を具体化。
- 4. 着工〜引き渡し(5〜7ヶ月):施工管理は工務店が担当。月1〜2回の現場確認は現地で。
- 5. 入居・引っ越し:住民票の移動・転校手続き・職場対応をまとめて進めます。
移住して家を建てた方の声
中川工務店で実際に家を建てた移住者の声を、 VOICE|建築家とつくった家、6軒の物語 に6軒分掲載しています。仕事と暮らしのバランス、子育て、土地探しのプロセスなど、「移住して家を建てる」の実際を、ご自身の検討素材としてご覧ください。
